この春はゆっくりお花見もできず、
以前は毎年ハニョと歩いていた、
目黒川沿いの桜を思い出していた。
「今年は目黒川の桜を見れなかったなぁ」
と、ひとりつぶやいていたら、
写真家の友人から、
目黒川の満開の桜の写真が送られてきた。
もちろん友人は、
わたしが見たいと思っていたことなど知らない。
いつも以心伝心で、
言葉を尽くさずとも心が伝わる友人。
その人とは、お互い、
あまり恵まれたとは言えない環境で育ち、
なおかつ、傍から見れば、
これも良い親とはお世辞にも言えないだろう親のことを
すべてひっくるめて愛している、
という共通点で理解し合ってきた。
きっと、体験した人のみが感じる痛みや悲しみ、
ほんの些細なことに対する深い喜びなど
ごく普通に育ってきたとしたら
知ることもなかった感情の積み重ねを
言わずとも、
兄弟のように分かち合った貴重な人だ。
彼は今、その感情の機微と豊かさを
写真で表している。
わたしが相方と入籍した時には
「家族写真を撮ろう。
将来、子どもが生まれたら
その子にとっては、仲のいい親の写真が
何よりもの宝物になるから。」
と、バズーカみたいに大きなカメラを担いで
わたし達の写真を撮りに来てくれた。
結婚式の時の写真よりも、
その写真を家に飾っている。
そして、その写真は、
将来娘に贈るアルバムにも
貼られる予定だ。
写真は過去や今だけではなく、
時に未来までも映してくれる。
撮影:中込孝嘉
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