春の風、舞い上がる。 | 雨、ときどき快晴。

雨、ときどき快晴。

気の向くまま、風の向くまま、生息中。ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
気の向くまま、風の向くまま、生息中。

ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
春の風、舞い上がる。

春の風、舞い上がる。

まるで四月のような陽気だった一日の
はじまりである今朝、
ふしぎな出来事があった。

早めに会社に着いて
最上階の大きな窓辺に座って空を眺め、
父とのことに思いを馳せていたら

ふいに、はるか眼下の歩道橋のあたりから
一片の紙片が風にあおられて宙に舞った。

どれくらいの大きさなのか、
ここからは定かじゃないけれど
葉書より大きい、ノートくらいのサイズかな?

その紙片は左右にゆられながら
風に押されるようにして
みるみるうちに上空へと舞い上がり、

まさか一枚の紙がこんな高さまで
上がらないだろうと思っていたのに
わたしが座っていた13階の窓と同じ高さを
やわらかく踊るように通り過ぎた。

さらには向こう側の高層ビルのほうへ
風と共にゆらゆらと昇ってゆき、

やがて高層ビルのてっぺんまで到着すると
しばらく空を遊ぶように漂って
ゆっくりひらひらと降りて、消えていった。

まるで笑うように、楽しそうに。

言葉もなく、ただ見惚れていた。

もし人の魂がかたちを作るならば
きっとあんなふうに、ひらひら、ゆらゆらと
宙を漂っているんじゃないだろうかと
目に見えないものを信じたくなった。

そしてふたたび父のことを想い、
心の中にぽっと小さな灯りがともった。
ほんの一時でも。

そのふしぎな光景を見た後で
父はまた救急で入院になってしまった。

今日は父の誕生日。

今の状態は
「おめでとう」という言葉がふさわしくないことが
悲しい。

だけれど、それでも今日、
こうして父を愛しく思えることがうれしい。

一枚の紙片が空を舞う姿を見て
苦しみがすこし楽になった今日。

お父さん。

あとどれだけの時間が
わたし達に残されているのかわからないけれど
できるかぎり、後悔のないようにと思っても
時々ゆらいでしまうけれど
心を込めて最後まで寄り添いたい。

そして、誕生日の今日、
ただ今は、懐かしい思い出たちに浸りたい。

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