雨、ときどき快晴。

気の向くまま、風の向くまま、生息中。ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
気の向くまま、風の向くまま、生息中。

ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
立秋

立秋

なんだか空が遠くに感じる。

家の近所の田んぼ道を歩くよりも
会社から見る都心の空は、どこか味気ない。

昨日、2ワンと一緒に歩きながら
見上げた空には、
はるか向こうまでうろこ雲が浮かんでいて
ずいぶんと空が高かった。

ぼんやりと見上げながら、
あぁ、立秋だものなぁ、と思う。

「暦の上では、もう秋なんだよ」と
ハニョ&シャビに話しかけてみると
ハニョはこちらをじっと見上げてしっぽを振る。

昨日もハニョは、
後ろから歩いてきた男性に気付くと
さわってほしくて、
何度も振り返りながらその人を待っていた。

でも、その人はなんなくハニョの横をスルー。

後ろ姿を見送りながら、
ふらふらと頼りなげに振るしっぽがせつない。

なので昨日も、仮の通りがかりの人物を演出。

「わぁー!可愛いキャバリア!
何歳ですか?こちらの茶色い子が女の子ですよね?」

そう言って手を伸ばすとハニョは、
うれしそうに目を細めながらしっぽを振って
手に顎を乗せ、身体を預けてくる。

この間は、真っ白な髪の毛を短く揃えた、
ハツラツとした初老のご婦人が
穏やかな笑みで近づいてきて、

「キャバリア・・・なつかしいわ。
触ってもいいかしら?」と聞かれた。

ハニョ&シャビは飛び上がらんばかりに
喜んでいた。

その方の知人が、ずっとずっと若い頃に
ヨーロッパでキャバリアと暮らしていて、
帰国する際に、大変な思いをして
日本までキャバリアを連れてきたのだという。

そして、JKCで犬籍登録をしたところ、
日本には、まだたった二頭のキャバリアしかおらず、
この子が三頭めですね、と言われたそうだ。

もう50年も前のこと。

それから何代にも渡ってキャバリアを飼い続け、
もう歳だからと、今は最後のキャバリアと暮らしているのだと。

「思い出話を聴いてくれてありがとう」と
優しい笑顔でその人は去って行った。

ハニョ&シャビと共に、その後ろ姿を見送った。

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