お気をつけて | 雨、ときどき快晴。

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気の向くまま、風の向くまま、生息中。ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
気の向くまま、風の向くまま、生息中。

ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
お気をつけて

お気をつけて

朝、駅近くにある駐輪場の角で
60代とおぼしきご婦人が
駅へ向かう人々に声を掛ける。

「おはようございます」
「いってらっしゃい」

声を掛けられる側の人は、会釈をしたり、
挨拶を返したり、それぞれだが、
私はその女性の声のトーンと
見守るような優しい表情が好きで
挨拶を朝の日課の楽しみとしている。

道行く人々に、いつも女性がかける言葉は
必ず、このふたつ。

おはようございます、と
いってらっしゃい。

だけれどある日、気がついた。

私が目の前を通る時、その挨拶に
一言付け足して添えられていることに。

はじめは気のせいだと思った。
たまたまかな?と思っていた。

だけれど、気をつけて聞いてみると、
前後を通る人たちには言わない一言が
確実に毎朝添えられていた。

少し離れた場所から私の姿を認め、通り過ぎる前に
その女性はにこやかな表情で、こんなふうに言う。

「いってらっしゃい。お気をつけて」

そっと添えられた、「お気をつけて」の一言。

あぁそうか、お腹が大きくなってきたからだ、
それをいつからか、気がついたんだ、と
やっと合点がいった。

見知らぬ人の、ささやかな心遣い。

こつぶの妊娠中と同様にマタニティマークはつけておらず、
電車でも、大きなお腹で座席の目の前に立って
「妊婦だ、譲らなきゃ・・」と思われるのが申し訳ないので
なるべく目立たないように隅の方に立っているが
それでも、後ろから肩を叩いたり、
離れた場所から声をかけて「どうぞ」と
言ってくれる人もいる。

申し訳なさと、その心遣いへのうれしさ。
しんどい通勤も、何より気持ちが救われる。
こつぶの時にもらった優しさも、
またふたたび思い出す。

ありがとう。その心遣い。
そして、「お気をつけて」に込められた優しさ。
日に日に心に積もってゆく。

写真は、
1歳になる頃のこつぶと、ハニョ。

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