ある親子の会話 | 雨、ときどき快晴。

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気の向くまま、風の向くまま、生息中。ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
気の向くまま、風の向くまま、生息中。

ただひたすら怠惰に眠るのが、目下の夢。
ある親子の会話

ある親子の会話

一昨年の春〜夏にかけて仮住まいをしていた時、
こつぶの通う保育園まで
朝夕、往復一時間半かかって車で送迎をしていた。

そのとき、今までよりも車に乗る時間が
長くなったから、
運転のルールやマナーなどに興味が出たようで、
毎日こつぶからたくさんの質問が飛んできた。

「どうしてあの車はプッて音を鳴らしたの?」

「車の右側だけピカピカ光ってるのはなあに?」

「なんでママ、いま手をあげたの?」

etcetc・・・


特に、車同士が道を譲り合ったり、
すれ違う時に交わすちょっとした挨拶などが
気に入ったようで、
気がつけばこつぶも隣でわたしの真似をして
挨拶をするようになっていた。

「ママ、今、あの車がどうぞってしてくれたから
しーちゃんもありがとうって
おじきしたからね」

時には相手の車のサインに
わたしより早く気がついて、手を上げたりする。
背が小さいので、
相手の車から見えるのかどうかはわからないが…。

疑問をぶつける⇒説明をする⇒理解して、
自分なりの考えをこつぶが言う、の繰り返しで、
車を運転している時は
常に周囲を見て気にしているこつぶとの
やりとりはますます楽しくなった。


そして、つい数日前のこと。

仕事が忙しく、
会社での打ち合わせが延びてしまって
ダッシュで保育園へ迎えに行った。

朝は朝で早起きして夕飯の支度をするつもりが
そっと階下へ降りたら寝室で息子が号泣したので
寝室へ戻って息子をなだめていたら
こつぶまで泣き出して・・・
2人を抱えて交互になだめるので手一杯で
夕飯の仕込みも自分の支度もできず、
チコク寸前で会社へ向かったから
この日はお迎え帰りにそのままスーパーへ行かなくてはならなかった。

時間はもうすぐ7時。
これからスーパーで買い物して
ダッシュで帰って夕飯を作って
ハニョ&シャビの散歩をして
お風呂を沸かして、入ったら洗濯をして・・・
と分刻みで頭でスケジュールを組み立てる。
疲れていたこともあって、くらくらした。

頭の片隅でいろいろと考えながら
スーパーの手前の道で
対向車線から来る車に道を譲ったところ・・・

こつぶが、

「ママ、なんで今、
お先にどうぞってしてあげたの?」
と聞いてきた。

「なんでだと思う?」と聞くと
うーん、と首を傾げる。

「相手の人がね、もしかしたら
急いでるかもしれないからだよ」
と答えると、

「どうしてそう思うの?」と聞く。

「急いでるかどうかはわからないけど
もしかしたら急いでいるのかも、って
想像したから、どうぞってしたんだよ」

「しーちゃんたちは急いでないの?」
こつぶが尋ねる。

「・・しーちゃんとママたちも
ちょっと急いでるかもしれないね。
今日は遅くなっちゃったし、
これからお買い物もしなくちゃいけないから
できたら急いで早く帰りたいね。

でも、もしかしたらさっきの人は
お熱の子どもを車に乗せていたのかも。
7時までだったらあいている病院があるから
間に合うように!って急いでたのかも。
この間、ママがきんちゃんを抱っこして
病院に走った時みたいに。

それか、いたいいたいのじいじが
具合が悪くなった時にママが急いだみたいに
誰かのところに急いでいたのかも。
わからないから、そうなのかな?って
思うしかないよね。

でも、ママたちはそれよりは急いでないから
どうぞってしてあげたの。
ママも、すっごく急いでる時に
どうぞってしてもらったら助かるから」

こつぶはしばらく考えて、

「そうだ!さっきの人は
大変なのかもしれないけど
しーちゃんたちは、みんな元気だもんね。
元気だと、どうぞってしてあげられるんだね」

まさにそうだ、と思って
「そうだね!そのとおりだよ。
元気だと、人にわけてあげられるんだよね」
と言い合って、スーパーへ着いた。


ぐずる息子をなんとかカートに乗せて
急いで買い物をして、車に積み込む。
周囲はもう真っ暗。

車までカートを引いて行き、
カートから息子を降ろしてチャイルドシートへ
うつそうとすると、再び息子がぐずり出した。
こつぶがなだめようとしてくれたけれど
息子はギャーギャーわめきながら
床に這いつくばって暴れて、傍を離れられない。

そこへ、50代くらいの女性がすっと来て
「カート、持って行っちゃうわね」と言って、
さっきまで息子が乗っていたカートを押して
店内の方向へ行こうとした。

「あ・・すみません!
ありがとうございます」
と振り返りながら慌てて言うと、

「ついでなんだからいいのよ。
可愛い時期だけど、大変よね」
と笑顔で言ってくれ、

「おねえちゃん、じっとしてえらいわね」
と娘にも笑いかけてくれた。

そのワンクッションがあったからか、
息子も機嫌の方向が変わり、
チャイルドシートに無事乗せることができて
車は走り出した。

「ママ、あの人やさしかったね!」
とこつぶはうれしそうに言い、
その後、わたしが考えもしなかったことを言った。

「ねえ、ママ!
さっきの人、もしかしたらママがさっき、
お先にどうぞってしてあげた人なんじゃない?
ママがしてあげたことをおぼえてて、
だから今やさしくしてくれたんじゃない?」

自分の思いつきに、
こつぶの心が上気しているのが
見てとれた。

すごいね。
ママはそんなふうに想像できなかったよ。
その考え、とっても素敵だね。

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2017.03.03 13:41 Yae
*幸四郎母さん

幸四郎母さん、大変遅くなりましたが、ありがとうございます。

わたしもこつぶの言葉にハッとさせられることが多いです。
子どもだからこそ浮かぶ柔軟で純粋な言葉。
あれこれ考える大人よりも、より達観しているように思えます。

思いやりの大切さをいかにして子供に伝えるか、
よく考えていましたが、
「思いやりを持つように」と言葉で伝えても説得力はないでしょうし、
自ら見せていくしかないと結論が出ました。
大変な時でも、誰か見知らぬ人であっても、
思いやる気持ちを忘れたくないなと思っています。

2017.03.03 13:24 Yae
*まろのちゃーちゃんさん

まろのちゃーちゃんさん、ありがとうございます。
そういえば娘がもっと小さい頃、
独自にお話を作って、聴かせていました。
絵本みたいな出来事は実は身近にあるのかもしれませんね。
それに気がつく大人でいたいな。
いつか息子にもお話を作ってみたいと思います。

2017.03.03 13:21 Yae
*みささん

みささん、とても遅くなりましたがありがとうございます。
子どもの純粋さならではの発想ですよね。
わたしも笑い泣きしそうになりました。

ふだんからよく考えるのですが・・
子どもに「思いやりを持ちなさい」ということはたやすい、
でもそれでは子どもはわからないんじゃないか?と。
見せるしかない、と思うんです。
親がそういう生き方をすることで、言葉じゃないものを
伝えられるんじゃないだろうかと。

自分はいろいろと至らず、情けなく思うことも多々ありますが
人への親切心は持ち続けたいと思っています。
それがこつぶに伝わっていると感じる時、
本当に心の奥底が震えるようにうれしいです。

2017.03.03 13:18 Yae
*rihachiさん

rihachiさん、はじめまして!
コメントをいただきまして、ありがとうございます。
お返事が大変遅くなってしまってごめんなさい。

通勤時に読んでいただけてうれしいです(^^
わたしも、娘の一言に救われました。
報いを求めて親切にするわけではないけれど
優しさが返ってくるように思えてうれしかったです。
柔軟な子どもだからこその発想なんでしょうね。

2017.01.20 10:00
幸四郎母
ふたつとも素敵なお話でした。
こつぶちゃんとやえさんの会話にはハッ!とさせられることが多いです。
心に残る本を2冊読んだときみたいなさわやかな読後感です。
わたしも常にお先にどうぞ!でありたいです。

やえさん 童話もかけちゃいますね。

2017.01.20 09:39
まろのちゃーちゃん
このまま、絵本にして読み聞かせてあげたいな。

2017.01.19 19:23
みさ
またまたウルウルしてしまった(T_T) 純粋で真っ直ぐな心、いくつになっても忘れちゃダメだよね。やえちゃんが こつぶちゃんに 何気なく体で教えてることも素晴らしい!!やえちゃんの行動から、こつぶちゃんが自然に学んでること、素晴らしいと思います!

2017.01.19 16:53
rihachi
いつも拝見しています。
はじめてコメントさせてもらってます。
バス通勤時に記事を読ませてもらってて、ウルっときてしまい泣きそうになってしまいました。とっても素敵なお話。
(о´∀`о)ありがとうございます

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