父の病状 〜その2 宣告と選択 | 雨、ときどき快晴。

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父の病状 〜その2 宣告と選択

父の病状 〜その2 宣告と選択

前の記事のつづきです。

父がもう厳しい状態だと感じたので
兄にも連絡し、
「重要な話だったらわたし一人で判断できないから」と
その日は兄にも来てもらいました。

父がお世話になっているのは院長先生で
肝臓の専門医。
本当に物腰がやわらかく、
どんな時も優しく話してくれるのですが

今回も、とても優しい口調ながら
話の内容はやはりとても厳しかったです。

父の体調が急変したこと、
点滴などもしたが、良くなる様子が見られないこと、
肝臓や腎臓の数値も限界とのこと・・・

「正直なところ、
いつ心臓が止まってもおかしくない状態です」と。

普通の人であればなんてことない微熱や
ほんのちょっとの風邪でも、
もう持ちこたえられないだろうと。
何をきっかけに心臓が止まってしまうかわからず、
これ以上のことは(そもそも父が望んでいないので)
もう難しいと思います、とのことだった。

「それで、こういうお話を切り出すのは心苦しいですが、
心臓が止まった場合、心肺蘇生はしますか?
これ以上の治療をしないことは承知していますが、
心肺蘇生をすれば、少しの延命はできるかもしれません」

と聞かれた。

これは事前に家族に意向を聞いておかなければ
ならないんだそう。

すぐ心肺蘇生をすれば心臓がまた動くこともあると。
ただ、父の状態ではそれでも一週間生き長らえるくらいだと。
そしてその間、本人は苦しいのだと・・・。

自分が、足の上に置いた両手を痛いくらいに
掴んでいることに気がついた。
それくらい力を振り絞って言わなくてはいけなかった。

「心肺蘇生はしないでください。
そのときがきたら、
もう逝かせてあげてください。」

兄も同様の意見だった。
伯父たちも「そうしてください」と賛成した。

先生は気持ちを汲むように、こう言ってくれた。

「私も心肺蘇生をしないほうがいいと思います。
もうじゅうぶんお父さんは頑張ってこられました。
お嬢さんがこれまで献身的にお父さんを見てきたことを
私たちもよく知っていますし、
お父さんもわかっているはずです。
心肺蘇生をすれば、
最期に別れを言う時間はできるかもしれませんが
これまで長い時間をかけて
じゅうぶん向き合ってきたと思います。
最期に別れを言えるかどうかは、
もう重要ではないと思います」

先生の言葉を聞きながら、
初めて泣いた。涙が止まらなくなった。

父が入退院を繰り返すようになってから三年半、
ずっとずっと、気を張っていた。
泣きたくてたまらなくても、しっかりしなくてはと
いつもすんでのところでガマンしていた。
でも、もういいだろうと、やっと思えた。

ひとつだけ先生にお願いをした。

ただでさえ、もうほとんど食べられない状態なのに
腎臓などが悪くなっているため、
食事制限をされている。
味が濃いものや塩分の強いものが好きな父だけれど
それらは一切ダメと言われているため、
余計に食べられない。
治る病気ならば、それでもがんばれと励ますが、
もう余命いくばくもないのならば、
食べたいものを食べさせてあげたいのだけれど、
どうでしょうか?と。

先生は少し考えた後、
「数値から考えれば塩分などは本当は避けたいけれど
仰るとおりにしましょう。制限はやめましょう。
もし好きなものを食べることによって元気が出るのなら
それに勝ることはありませんから」
と言って、制限を外してくれた。

よかった。
これで、好きなものを食べさせてあげられる、
とほっとした。


先生との話も終わり、病室へ行って、
伯父さんたちが来てくれたことを父に言うと
焦点の合わない目でぼんやりしながらも
はるばる会いに来てくれた兄弟に
「来なくてよかったのに」と絞るような声で悪態をつき、
「相変わらずだなあ、ほんとに」と兄弟たちを笑わせた。


→書き切れず、次で最後になります。
 読み飛ばしてくださいね。

*今回も本文と写真は関係ありません。
 ででん、と寝転がるハニョです。

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2014.05.21 11:13 *marthaさん

重い話にコメントをいただいてありがとうございます。

本人の「やりたくない」という強い意志がなければ、
家族とはしてはきっと病院から説明されるがままに、
治療や心肺蘇生をしてしまいますよね。
誰だって生きてほしいと思いますから・・・
延命を重視する日本のお国柄も強く影響しているのだと思います。
北欧などでは「口から食べられなければ、それは死の時期が来ている」と
皆が普通に考えて生きているようです。

お嬢さんのことに関しては・・・もう言葉もないです。
marthaさんのお気持ちを思うと・・・
闘病生活を想像しただけで涙が出てしまいます。
自分が娘がいることもあって、より強く感じ入ります。

家族を看取るというのは、乗り越えることではなくて
受け入れることなのだと最近は思います。
きっとそれは、看取った後も続いて行くことなのでしょうね。

同じく、自分や家族の行く末についても身近なものとして
考えるようになりました。
自分がどうしたいか、家族にどうしてほしいか、
話し合っておくことが必要ですね。

2014.05.21 06:44
martha
お辛いなかでしょうが、しっかりお話下さる主治医先生でなによりですね。
終末期医療は長く考えている事柄です。
父も娘もとても厳しい闘病でした。
当時は当然のように心配蘇生がおこなわれましたが、最後の最後、もっと静かな看取りができたはずだ、とずっと悔いが残っています。
手を尽くし、心を砕いても
「これでよかったのかな?」
と思うのは自明ですが、
自分自身のこと、親たちの看取りについてはずっと考えていきたいと思います。

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